音声の疾患でよくある質問
声帯の萎縮が考えられます。萎縮は、『生まれつき』『ホルモンの影響』『声の使い過ぎ』『老化現象』『声帯を支配する神経の麻痺』等様々な原因で起こります。
萎縮の程度が軽い場合は、言語聴覚士の指導のもと、声を出す練習を行い、声帯の筋肉を鍛えることで改善することもあります。数秒しか声を出すことができないような重症の場合は、ヒアルロン酸を声帯に注射して一時的にボリュームを増したり、手術(甲状軟骨形成術Ⅰ型)を行うこともあります。
新たな治療法として、当院では自己血から血小板を濃縮したもの(多血小板血漿)を精製し、声帯に注射することで萎縮を改善させるような治療も自費診療で行っています。声帯萎縮以外の病気も考えられますので、日常生活に支障をきたすようでしたら一度音声専門医の診察を受けることをお勧めします。
声を出すためには、声帯が柔らかく、粘膜が湿っていることが必要です。特に冬は空気が乾燥しているので、水分を十分取り、加湿器を利用するのも良いでしょう。水を飲んでも声帯までは届きませんので、吸入器を使用するとさらに効果的です。声が出しにくい場合は、喉の緊張をとって声を出す練習(リハビリテーション)が必要な場合もあります。
声変わりによる喉頭の変化に発声方法が伴わなかった場合、声変わり後も声が高いままとなっている場合があります。数か月のリハビリテーションで低い声で話せるようになることが多いのですが、それでも治らない場合は声帯が短い、薄い、緊張し過ぎている、甲状軟骨の大きさと声帯のボリュームのミスマッチがある等の原因も考えられ、 手術(甲状軟骨形成術Ⅲ型)が適応になる場合もあります。
女性で声が低いのは、『生まれつき』、『ホルモンの影響』、『蛋白同化ホルモンを飲んでから』等、原因は色々です。また、性同一性障害MTF(心は女性であっても身体が男性であるという方)においては、成長とともに声が低くなってしまいます。治療法は主として手術で、声帯を緊張させる手術(甲状軟骨形成術Ⅳ型)が有効です。
声帯結節、声帯麻痺、声帯萎縮、声帯溝症、声帯ポリープ、腫瘍、癌など、声がかすれる症状を呈する疾患はたくさんあります。声帯そのものには異常がなくとも、発声方法がうまくできないためにかすれることもあります。一言で声がかすれるといっても、診断が難しい場合も少なからずあります。
喉頭ファイバースコープに加え、声帯の振動を見るストロボスコピー、音響分析検査や音声機能検査など、専門的検査を行ったうえで診断を行う必要があります。
全身麻酔では、通常気管内挿管を行い、麻酔を行いますが、挿管チューブの圧迫により声帯麻痺が生じたり、または披裂軟骨脱臼が起こることがあります。自然に治ることもありますが、半年以上経過しても治らない場合は外科的治療が必要となります。また、甲状腺や頸椎の手術、肺がんや大動脈瘤の手術の場合、手術そのものの侵襲により声帯を動かす反回神経が損傷されることもあります。いずれにしても、どのような原因で声が出にくいのかを、診断することが重要です。
大きな声を出すためには、「1.しっかりと息を出すことができる」「2.声帯がしっかり閉鎖できる」「3.口や鼻、副鼻腔などの共鳴腔をうまく利用すること」の3つの条件がそろうことが必要です。リハビリテーションで改善していくことはできますが、声帯麻痺など手術が必要な場合もあります。重症のアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎がある場合は、鼻疾患の治療も並行して行う必要があります。
急に声が出なくなる原因として、最も多いのは風邪に伴い声帯まで炎症が及んでしまった場合です。こういった場合は無理に声を出そうとして、より喉に力がかかり更に悪化することもあるので、消炎剤内服や喉の加湿を心がけてゆっくり身体を休めることが必要です。風邪などの自覚がない場合は、過緊張性発声障害や心因性発声障害、声帯麻痺など、専門的治療が必要な疾患であることもあります。長引く場合は、音声専門医の診察が必要です。
内転型けいれん性発声障害、過緊張性発声障害、心因性発声障害、本態性音声震戦症、吃音などの可能性があります。時に診断が難しく、まずは音声専門医での診察をお勧めします。こういった症状は常に出るわけではなく、仕事中に出にくくなる、電話で出にくい、お酒を飲んだ時は比較的出やすいなど、変動があります。診察の際には不思議なくらいに声の調子が良いことも多く、担当医には異常なしと言われてしまうこともあります。調子が悪い時の音声を録音された上で受診することをお勧めします。
誰でも声が出にくくなると、無意識に頑張って声を出そうとしてしまいます。あるいは、騒がしい環境だと相手に聞き取ってもらうように大声を出そうとしますが、それが行き過ぎると普通に発声しようとしても喉が締め付けられるような発声方法になってしまうこともあります。内転型攣性発声障害、過緊張性発声障害、心因性発声障害、本態性音声震戦症、吃音などの可能性もありますので、音声専門医の診察を受けることをお勧めします。
声の印象だけでは診断を確定するには十分ではありません。喉頭ファイバー、ストロボスコピー、音響分析、音声機能検査など、専門的検査を受けられたうえで、診断されます。音声専門医の診察を受けることをお勧めします。
声には外見と同じく個人差があり、治療で自分が憧れる声になれるわけではありません。しかし、話す高さや話し方で他人に与える印象はずいぶん変わることもあります。また、声変わり障害などの疾患によって声が甲高いままの場合は、リハビリテーションや手術を受けることで改善する可能性があります。音声専門医の診察を受けることをお勧めします。
ボトックス注射の効果が得られない場合は、過緊張性発声障害など他疾患の合併の可能性があります。声帯の筋肉だけではなく、外喉頭筋や舌などの筋肉にもジストニアが生じて声が出にくくなっていることもあります。このあたりの判断は、音声疾患に精通している医師でなければ困難であることもあります。
また、喉への注射はむせやすく、注射の際に喉が動くこともありますので、薬が十分に注入されていない可能性もあります。
原則として、身体への侵襲が軽い治療法から試すべきです。具体的には「1.リハビリテーションや投薬」「2.ボトックス注射」「3.手術」です。1は喉頭マッサージや発声練習、つまりや震えを改善させる効果のある薬の内服を試みます。効果がなければ、2や3を行うことを検討します。その方の病歴、これまでの治療経過、仕事の内容、家庭環境、背景などを考慮して治療法を決定します。
現時点では障碍者手帳の対象にはなりません。
痙攣性発声障害に対して行うボトックス注射は、2018年6月より保険適応となっており、当院で行っております。また、喉頭全体の緊張が強く、痙攣性発声障害か過緊張性発声障害かの区別が難しい場合に、ボトックス注射で症状が改善するかどうかを見る場合(診断的治療)もあります。高額な薬であり保険を適用しても、診察料や処置料などを含めて、2万円弱自己負担がかかります。