鼻の疾患でよくある質問
鼻詰まりが一年中あるような場合、通年性のアレルギー性鼻炎や肥厚性鼻炎、慢性副鼻腔炎などの可能性があります。まずは詰まりの原因がどういう疾患であるのかを診断することが重要です。それぞれの疾患について様々な薬がありますが、長期間にわたり鼻詰まりが持続している場合は、いずれの疾患にしても手術的治療が最も効果的であり、長期間効果も持続します。
治療を行うにあたり、まずは薬の内服や鼻内の処置、ご自宅での鼻洗浄を徹底してもらうことから始めます。効果があまり感じられなかったり、薬をやめるとすぐに症状が再燃したりする場合は、手術を行うことを検討してください。手術はかなり辛いものというイメージがありますが、術後の痛みは手術当日でも鎮痛剤の点滴や内服でコントロールできますし、翌日以降はあまり痛みで悩まされる方はおられません。術後の一時的な鼻詰まりはどうしても避けられませんが、数日経過すれば鼻内の炎症も収まり、徐々に鼻の通りが改善してきます。手術を受けられた90%以上の方が、症状の改善を自覚されています。
抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤といわれる種類の内服薬を毎日服用し、ステロイド点鼻薬を継続使用することが、まずは基本的な治療です。この投薬でも症状の改善が十分でない場合は、外来において高周波メスによる下鼻甲介粘膜焼灼術、または1泊2日の入院で行う、全身麻酔下での手術が有効です。
またはハウスダストやスギ花粉のアレルギーをお持ちの場合は、減感作療法といわれる体質改善のための治療を行うことも選択肢の一つです。
急に嗅覚が悪くなった場合と、徐々に悪くなった場合に分けられます。
急に嗅覚が感じられにくくなった場合には、頻度の多い順に①感冒後嗅覚障害(風邪症状の後に嗅覚が低下する;コロナウイルス感染もこれに含まれる)②外傷性嗅覚障害(交通事故などにより、頭部が損傷した場合に起こることがある)③一時的な急性副鼻腔炎に伴う鼻つまり、鼻汁による嗅覚障害に分けられます。
一方、徐々に嗅覚が分かりにくくなってきた場合については、①好酸球性副鼻腔炎 ②パーキンソン病やアルツハイマー病などの中枢疾患 ③鼻中隔弯曲症や重度のアレルギー性鼻炎 などの可能性があります。先天的に嗅覚が感じられない疾患もあり、その鑑別がまずは重要です。
鼻中隔弯曲症がある可能性があります。成長過程で、鼻中隔が左右どちらかに弯曲し、鼻の通り具合に左右差が感じられることは少なくありません。アレルギー性鼻炎を合併すると、鼻づまりの症状がさらにひどく感じられることもあります。また、鼻茸といわれるポリープ様病変が認められる場合には、左右の鼻で通り具合に差があることもあります。前の質問と同様ですが、どのような原因で左右差のある鼻詰まりが起きているのかを調べることが重要です。
当院では行っておりません。減感作療法は長期間にわたり減感作のための薬を舌下に入れることを反復し、徐々にアレルギーの体質を改善する治療です。内服治療などよりも根本的な治療法です。現在のところ、ハウスダストやスギ花粉に対してのみ治療薬(シダキュア(r)など)があり、すべてのアレルギーに対応できるわけではありません。地道な治療で継続する必要がありますので、お近くの耳鼻咽喉科で行っておられるか、一度尋ねてみることをお勧めします。
花粉症などのアレルギー性鼻炎は、一日の中でも極端に症状が変化します。昼間の活動的な状況では鼻づまりは自覚しにくくても、リラックスする状況やアルコール摂取時、夜間就寝前や起床後には特に鼻詰まりがひどくなる方が多くいらっしゃいます。
まずはアレルギーの原因を検査で特定したうえで、内服薬や点鼻薬を使用すること、副鼻腔炎が合併しているかどうかを確認することが必要です。小児では、鼻だけでなくアデノイドといわれる上咽頭リンパ組織の肥大や口蓋扁桃の肥大なども鼻詰まりの原因となりますので、鼻を含めた上気道の精査が必要となります。そのうえで、内服や点鼻薬などの投薬治療、減感作治療、手術的治療のうちどのような治療を行い、組み合わせるかが重要です。
まずはアレルギー性鼻炎であるのか、副鼻腔炎を合併しているのかの鑑別が必要です。その他アデノイド肥大や扁桃肥大により、鼻詰まりが生じている可能性についても検討します。
小児に対しては、基本的に投薬やアレルゲンの回避などの保存的治療を行いますが、睡眠時無呼吸を生じるほどのアデノイド肥大や扁桃肥大に対しては、手術を行います。また、重度のアレルギー性鼻炎に対しては、減感作療法、小学校高学年であれば手術的治療を行うことも検討します。
慢性的な鼻閉に対しては、小学校高学年以降であれば手術的治療を行うことを検討します。または、最近適応となった抗体治療薬の注射も選択肢の一つです。重症のアレルギー性鼻炎については、かかりつけの耳鼻科の先生とよく相談することをお勧めします。
鼻が原因のいびき、のどが原因のいびき、またはその両方が原因となっている場合があります。鼻中隔弯曲症やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎が原因となっている場合もありますが、鼻以外に喉の咽喉頭の組織の肥大が原因となることも少なくありません。鼻、のど、どちらの影響が強いかをまずは術前に判断することが重要です。のどが原因のいびきでは、鼻の手術を受けられても十分いびきが改善しないこともあり得ます。
アレルギー症状に対しては、抗アレルギー剤、点鼻薬の使用とともにマスク着用、空気清浄機使用などの環境の整備をまずは試みます。それで十分でない場合は、レーザー治療による鼻粘膜を焼灼、粘膜下下鼻甲介骨切除や後鼻神経切断術を検討します。一時的な症状であれば、投薬で乗り切ることを勧めますが、日常生活に大きく影響が出る場合は、外科的治療の選択も検討します。
また、最近では、ハウスダストやスギ花粉に対してのアレルギー体質改善のための減感作療法や、IgE抗体に対する抗体治療薬の投与という選択肢も広がっていますので、どのような治療を行うか担当の医師とよく相談してください。
最も出血しやすい部位は、鼻の入り口近くにあるキーゼルバッハと呼ばれる毛細血管が集まっている部分です。まずはその部分を圧迫することで対処します。それでも繰り返す場合は電気メスなどで焼灼することで鼻血は出にくくなります。
ただし、抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬)を内服されていたり、高血圧がコントロールされていない方では、繰り返し出血が起こりやすくなります。抗凝固薬の一時的な中止や降圧剤の追加を、内科担当医の先生に相談する必要があります。
また特に鼻腔の後方から生じる出血では、出血量も多く、のどに多量の出血が流れるため、耳鼻咽喉科で内視鏡下での止血処置が必要になります。
また比較的稀ではありますが、遺伝的に出血が生じやすい病気や血液疾患による鼻出血もあり、止まりにくい場合は性差が必要です。
鼻・副鼻腔(上気道)と、気管から気管支、肺(下気道)については、同じような組織構造であり、同様の疾患が生じることが多くみられます。最近では鼻から気管・気管支・肺にかけて一連の組織ととらえ、それらに一連の病気が生じるという、one airway one diseaseという概念が提唱されています。
喘息をお持ちの方はアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎を生じる可能性は非常に高く、同時に治療を行う必要があります。特に喘息と関係が深い好酸球性副鼻腔炎では、高い割合で嗅覚障害を生じることがあります。嗅覚障害は、意外に自覚症状が乏しいことが多いため注意が必要です。
特に鼻の病気がなくともある程度は鼻汁が喉に流れることが普通ですが、粘り気の強い膿のような分泌物が喉に落ちる場合は、副鼻腔炎の可能性があります。 副鼻腔炎と診断された場合は、まずは投薬などの保存的治療、それで十分改善しない場合は手術などの外科的治療を行います。短い期間で自覚されたのか(急性)、数か月以上の長い期間にわたり自覚されたのか(慢性)によって治療法も変わってきます。
同部位に痛みを自覚する場合は、副鼻腔炎の可能性が考えられます。CTやレントゲン撮影を行い、副鼻腔炎と診断された場合は、まずは投薬などの保存的治療、それで十分改善しない場合は手術などの外科的治療を行います。短い期間で自覚されたのか(急性)、数か月以上の長い期間にわたり自覚されたのか(慢性)によって治療法も変わってきます。