副鼻腔炎・好酸球性副鼻腔炎の症状・症例
鼻の周りに存在する空洞「副鼻腔」が、細菌やウイルスによる感染やアレルギーによって炎症を起こした状態が急性副鼻腔炎です。鼻づまり、鼻水、発熱などの症状があります。頬、目の周り、額などに痛みを感じることもあります。その急性副鼻腔炎が3か月以上続き、内部に膿やポリープが充満して排出できない状態が慢性副鼻腔炎です。
また最近では、細菌感染よりもアレルギーが強く関与している「好酸球性副鼻腔炎」が増えています。
- 血液中好酸球値が高い
- 鼻茸を認める
- CTにて篩骨洞優位の炎症を認める
- 両側性である
- 嗅覚低下を伴うことがある
- 気管支喘息をお持ちである
といった項目に当てはまる方が「好酸球性副鼻腔炎の疑い」とされます。
さらに鼻茸などを切除して病理組織学検査によって、好酸球の数が多い(顕微鏡400倍観察視野中70個以上)場合に確定診断とされます。
重症度について
重症度は「軽症」「中等症」「重症」の3段階にわかれますが、血液中好酸球値が5%を超えている方、解熱鎮痛薬によって引き起こされるアスピリン喘息を合併されている方は、中等症、もしくは重症の好酸球性副鼻腔炎と診断されます。
好酸球性副鼻腔炎は厚生労働省指定難病とされ、認定された場合治療費の補助が受けられますが、実際の審査では主に手術を繰り返す「重症」の方が認定されているようです。
診断・治療方法
ファイバースコープによる鼻の中の観察、CT検査、血液検査を行います。マクロライド系抗生剤や消炎剤の内服を行い様子を見ていきます。治療として、鼻洗浄、抗菌剤、消炎剤、抗生剤などを長期服用していただきます。それでも効果が不十分な場合は、手術治療(内視鏡下副鼻腔手術)を行うこともあります。ただし、手術を行えば完治するとは限らず、手術を行うことによって副鼻腔が開放され、結果として鼻洗浄や点鼻薬の効果が行き届きやすいという状態にすることが手術の目的です。
この手術は、ポリープや腫れた粘膜によって閉鎖してしまった副鼻腔の壁を一部取り払って広い空間にして、空気や鼻水の流れを改善させる手術であり、内視鏡を使って行うので顔には傷はつきません。ただし、徹底して手術を行うために、全身麻酔で行う必要があります。
手術を行い一旦改善しても個人の体質によっては再発率が高くなる為、定期的な術後のフォローアップが必要となります。再手術などを行わずにすむ治癒率は60%程度と言われています。軽度の再発の場合は、外来での処置、内服薬の追加、鼻洗浄の継続などにより様子を見ます。再発したポリープを切除するために再手術を勧めることもあります。
手術を行っても再発がすぐに生じてしまうような重症例では、抗体治療薬(デュピクセント®)を用いた治療も行っており、手術を含めた効果的な薬物治療を選択します。
手術後の治療セルフケア
ポリープが非常に再発しやすい疾患ですので、自宅でのセルフケアと術後の通院処置が大切となります。
自宅でのセルフケア方法
食塩が入ったお湯による鼻洗浄を自宅で毎日しっかり行っていただき、ステロイドの点鼻薬を続けます。また、抗生剤やステロイド薬の内服などを数か月、続けていただくことがあります。
通院処置に関して
診察時に随時ファイバー検査を行います。また、術後3か月から半年程度でCT検査を行い、手術の効果を確認することがあります。
好酸球性副鼻腔炎の中でも特に中等症や重症の方は、症状に合わせて数年以上長期間にわたって様子をみていく必要があります。喘息や糖尿病、高血圧などの治療が一生涯続くのと同様と考えてください。
最初の1か月は週に1回程度の通院、その後は1~3か月毎の通院をお願いしています。鼻症状の悪化時は短期的に追加治療を行い、間をあけずに受診していただく必要があります。嗅覚や鼻閉の悪化は診察の目安となりますので受診をお願いします。
また、手術後に鼻茸(ポリープ)が再発して大きくなり、鼻詰まりや嗅覚の低下が著明になってきた患者様に対し、当院では抗体療法デュピクセント注射(ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体療法)も行っています。デュピクセントの適応となる要件が厳しく、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の方(既存治療で効果不十分な患者に限る)で、全ての方に使用できるものではなく、高額の治療となります。