耳の疾患でよくある質問

真珠腫性中耳炎は繰り返すと聞きましたが、治すことはできますか?

真珠腫の再発には2通りあります。

一つは手術の際に、完全には取り切れず、残った真珠腫が再び大きくなってくる遺残性再発です。これに対しては、取り残しの可能性が少しでもある場合は、半年~1年の間隔をあけて2回の手術を行う段階手術という方法をとります。特に小児の真珠腫は成人より遺残性再発が起こりやすいため、原則として段階手術を行います。

もう一つは、いったん真珠腫を完全に取り除いたとしても、術後数年以上経過すると、鼓膜の一部が中耳腔(鼓膜の内側の空間)に陥凹してゆき、再び真珠腫が形成されてしまう再形成性再発があります。特に鼻すすり癖がある方は、再形成が起こりやすく、術後特に症状がなく調子が良いと思っていても、再形成性再発が起こっていることもあり、術後10年以上にわたり年に1,2度の診察が必要となります。

いずれにしても真珠腫は手術を行えば、二度と再発しないというものではなく、たとえ自覚症状がなくとも術後長期間にわたり観察が必要な病気です。


山に登った後、飛行機に乗った後などに耳がおかしい感じがします。病気でしょうか?

鼓膜の内側(中耳腔)と外側で圧力の調整がうまくできないことがあります。通常は中耳腔と鼻は耳管という管でつながっていますが、通常は耳管は閉じており、つばを飲み込んだり、あくびなど大きく口を開けたりしたときに開く構造になっています。この耳管の開き具合は個人差があり、なかなか開きにくい方もおられます。特に口唇口蓋裂の方や、ダウン症の方など、先天的に開きにくい方もおられます。こういう病態は、耳管狭窄症と呼ばれます。

一時的に耳の閉塞感を感じるだけなら、特に治療は行いませんが、長期間症状が続いたり、難聴の自覚もあるなどの場合は、耳鼻咽喉科でご相談ください。

耳に閉塞感があります。病院に行った方がいいですか?

耳の閉塞感については、Q2で回答した耳管狭窄症以外に、突発性難聴やメニエール病、耳管開放症、真珠腫、慢性中耳炎、滲出性中耳炎など、さまざまな病気の可能性があります。その区別については、耳鼻咽喉科専門医でご相談ください。


突発性難聴は治りますか?

症状を自覚されてから治療までの期間が短ければ短いほど治る率が高いといわれています。その他、年齢が若い方の方が治りやすく、また、めまいを伴う場合は治りにくい、など随伴症状によっても変わってきます。いずれにしても突発性難聴以外の疾患と鑑別が必要で、治療を行うにも早期の方が改善率が高いので、突然片側の耳に難聴を自覚した場合は、早期に耳鼻咽喉科に受診することをお勧めします。

鼓膜の穴をふさぐことはできますか?

耳かきなどによる外傷や急性中耳炎で一時的に鼓膜に穴があいてしまっても、自然治癒力で治ることもあります。ただし、数週間経過しても穴がふさがらない場合や、耳だれ(耳漏)を繰り返す場合は、手術を行うことがあります。

当院では、通常の鼓室形成術以外に、ご自身の血液から血小板を採取して濃縮したもの(多血小板血漿)を使用して鼓膜の再生を特に強く促す治療法も行っています。


急に耳が痛くなりました。原因や治療法はありますか?

ほとんどの場合、急性中耳炎で、風邪をひいているお子様に多く起こります。

特に緊急性はありませんが、中耳炎の場合はかなり痛がりますので、とりあえず痛みを抑える必要があります。バファリンなどの鎮痛剤、小さなお子様の場合は熱さましの坐薬(熱がなくても使用可です)を使うことで、痛みは抑えられます。お薬が手元にない場合は、冷やした濡れタオルなどで耳の周囲を冷やすことで痛みは少し和らぐはずです。

急性中耳炎の場合、引続き滲出性中耳炎に移行し長期間治らないことがあります。子供は少々聞こえが悪くてもなかなかそれを訴えませんので、痛みが治まっても、耳鼻科を受診されることをお勧めします。

小児に多い急性中耳炎以外に、耳周囲のヘルペス感染によっても痛みが生じます。また耳に炎症がなくとも、扁桃の炎症や首のリンパ節の炎症によっても耳が痛いと自覚される場合があります。小児の中耳炎は、風邪に伴い一時的に起こることは珍しくなく、風邪の症状が治まるとともに治ってくることが多いですが、ヘルペスの場合は抗ウイルス薬などの投薬が必要になります。

聴こえが徐々に悪くなってきています。どうすればよいでしょうか?

難聴が徐々に進行するのは、加齢に伴う老人性難聴が最も多いですが、それ以外の真珠腫や耳硬化症、メニエール病や遺伝性難聴など、加齢以外が原因の難聴もあります。どのタイプの難聴であるかを診断し、それに応じて治療法を決定します。


幼少時から難聴があり、徐々に進行しています。どうすればよいでしょうか?

小児に多い難聴は、滲出性中耳炎が最も多いですが、学童期になると多くは治癒します。進行する場合は、先天性真珠腫やその他の内耳性難聴などの可能性もあり、耳鼻咽喉科専門医でまずは適切に診断してもらうことが重要です。学童期は、学校での授業や友達同士でのコミュニケーションに支障がないよう、補聴器のフィッティングを行うこともあります。

片耳のみ聴力が悪いのですが、治りますか?

難聴のタイプは、鼓膜の振動が内耳までうまく伝わらない伝音難聴、鼓膜の振動は内耳まで伝わっても内耳や聴神経の機能が低下して聞こえにくい感音難聴、その両方が原因の混合性難聴に分類されます。

鼓膜穿孔や耳小骨の異常で音の振動が伝わりにくい状態に対しては、手術によって改善の可能性があります。内耳性の難聴の場合は、治療が難しい場合が多いのですが、両耳とも高度難聴がある場合は、人工内耳の手術の適応となります。


長年耳だれが出ていますが治すことはできますか?

手術を行うことで耳漏はほぼ停止します。ただし、MRSAなどの薬剤耐性菌の感染がある場合は、術前後の抗生剤投与が必要になったり、術後頻回な耳処置が必要になることがあります。

長期間続く耳漏の原因として、①外耳炎 ②慢性中耳炎 ③真珠腫性中耳炎などの可能性が考えられます。①については、原因となっている細菌を検査で同定し、その菌に特に効果的な種類の抗生剤を投与します。


難聴のため、時々日常会話で不自由を感じることがあります。補聴器をつけた方が良いでしょうか?

WHO(世界保健機関)では成人では40dB以上が補聴器を使い始める目安としています。生活環境によって困る場面は人それぞれですので、聞こえにくくてお困りでしたら補聴器の適応かもしれません。ぜひ耳鼻咽喉科で相談してみてください。

補聴器はどこで、いくらぐらいで買えますか?

補聴器を検討されている場合、まず耳鼻咽喉科を受診してください。購入を検討する場合は、病院の補聴器外来か、認定補聴器専門店をお勧めします。認定補聴器専門店は認定補聴器技能者がいるお店です。

補聴器は聴覚の身体障碍者手帳をお持ちでない方は基本的には自費購入となります。補聴器の補助がある地域もあります。補聴器の種類によって価格も変わりますが、10万円弱から50万円以上のものまでさまざまです。価格が高ければよく聞こえるというわけではありませんので、自分に合う補聴器を見つけることが大切です。

両耳とも難聴がありますが、補聴器は両耳にした方が良いでしょうか?

補聴器は両耳装用が基本です。メリットとしては、どちらからでも音が聞こえる、方向感が得られる、言葉が理解しやすくなるなどがあります。デメリットは価格が高くなることです。ぜひ両耳から試聴してみてください。

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